本研究の実証分析に用いた調査データは、2019年9月20日から24日にかけて実施したインターネットアンケート調査の結果です。調査対象は日本の中小企業経営者であり、1,082者から回答を得ました。ただし、分析対象としては、企業年齢が3年以上かつ国内に主たる事業所を有する900者に絞りました。
この調査では、企業の環境変化認識、戦略的連携、組織機敏性、ITダイナミック・ケイパビリティ(IT-DC)、競争優位の各構成概念に対応する項目について質問しています。回答は5段階評価で収集し、多様な角度から企業の実態を捉えました。
分析手法には構造方程式モデリング(Structural Equation Modeling:SEM)を用いました。SEMは、直接観測できない潜在変数間の因果関係を同時に推定可能な統計的手法で、多変量解析の一種です(長畑, 2001)。本研究のように複数の潜在概念が複雑に関係するモデルの検証に適しています。
SEMの利用により、調査項目を通じて測定された観測変数から構成概念の妥当性を評価するとともに、仮説に基づく構造モデルの適合度やパス係数を推定しました。これにより、戦略的連携とダイナミック・ケイパビリティが中小企業の競争優位にどのように影響を与えるかを定量的に検証しています。
本研究が中小企業の戦略的連携に関する定量的実証研究として、理論と実務を橋渡しする資料となることを目指しました。
長畑秀和(2001)『多変量解析へのステップ』共立出版