これまで、戦略的連携の重要性やダイナミック・ケイパビリティ(DC)の概念、そしてこれらが相互に作用する仕組みについて解説してきました。今回からいよいよ実証に入ります。
理論を検証するための仮説について説明します。これらの仮説は、これまでに示した概念に、どのような関係があるのかを明らかにすることを目的としています。仮説を3つに分けて示します。
- 環境変化の認識と戦略的連携の関係
環境変化を強く認識している企業ほど、自社に不足している経営資源を補うために戦略的連携に積極的に取り組むという仮説。環境変化に敏感に反応し、その変化に対応する行動として連携が促進されるということです。
- 戦略的連携と競争優位の関係
戦略的連携は競争優位の獲得に寄与するという仮説。ただし、その影響は直接的なものだけでなく、組織機敏性やITを活用したITダイナミック・ケイパビリティ(IT-DC)を介して間接的に及ぼされると考えています。つまり、連携によって得られた資源を活用し、企業が迅速かつ柔軟に対応できる組織能力を高めることが競争力向上につながるということです。
- ITダイナミック・ケイパビリティ(IT-DC)と組織機敏性の関係
IT-DCは組織機敏性を促進し、その結果として競争優位に結びつくという仮説。ITを単なる道具としてではなく、環境変化に適応し競争優位を形成するための重要な能力として位置づけています。
これらの仮説は、理論的な蓄積と実際の企業行動を結びつけ、中小企業の戦略的連携とDCの相互関係を具体的に検証するための出発点となります。次回からは、この仮説を検証するための調査データや分析手法について解説し、実証分析の結果を順に示していきます。