構造方程式モデリング(SEM)を用いて、仮説の検証を行いました。SEMは複数の潜在変数間の因果関係を同時に推定できる手法であり、理論モデルの適合度や各パスの有意性を評価することが可能です。
分析の結果、まずモデル全体の適合度は良好であることが示されました。具体的には、適合指標の一つであるCFI(比較適合指数)が0.95以上、RMSEA(近似誤差平方根)が0.05以下と、一般に良好なモデル適合度の基準を満たしています。これにより、提案した理論モデルが調査データによく適合していることが確認されました。

仮説の検証結果については以下の通りです。
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環境変化の認識と戦略的連携
環境変化の認識が高い企業ほど、戦略的連携に積極的に取り組んでいることが有意に示されました(仮説1支持)。これは、中小企業が外部環境の変化に敏感に反応し、資源補完のための連携を強化していることを意味します。 -
戦略的連携と競争優位への影響
戦略的連携は直接的には競争優位に対して有意な影響を及ぼさないものの、組織機敏性とITダイナミック・ケイパビリティ(IT-DC)を介して間接的に競争優位を高めることが示されました(仮説2部分支持)。この結果は、連携によって獲得した資源や情報が企業の適応能力を高め、最終的に競争力向上に寄与していることを示唆します。 -
ITダイナミック・ケイパビリティと組織機敏性の関係
IT-DCは組織機敏性を高めることが有意に示されました(仮説3支持)。ITの戦略的活用が企業の柔軟で迅速な対応力を促進していることが確認されました。 -
組織機敏性と競争優位
意外なことに、組織機敏性は競争優位に対して負の影響を及ぼす傾向が観察されました。これは本研究の分析で示された特異な結果であり、組織機敏性の過剰な発揮が資源の分散や経営の混乱を招く可能性を示しています。
これらの結果は、理論的枠組みの妥当性を実証的に支持する一方で、組織機敏性の役割についてはさらなる検討が必要であることを示しています。