戦略的連携とDX 第4回「資源ベース論のパラドックス」

ここで、ダイナミック・ケイパビリティ(Dynamic Capabilities:DC)という理論の成り立ちをさらっと見ておきます。

資源ベース理論(Resource-Based View:RBV)は、競争優位の要因が企業の内部にあるという考え方です。市場で競争優位に立てるポジションがどこか?ということよりも、そのポジションを取ることを可能にしている経営資源の方が重要じゃないの?という考え方で、戦略論の一つの潮流となりました。

その一方で、RBV の限界も指摘されるようになります。それは、一言でいえば変化をあまり考慮していないことです。RBVでは、企業も市場も固定的、持続的で、安定的なものであると暗に仮定しています。実際にはそんなことないですよね。

いま成功している企業でも、やがて経営環境が変わり、競争に勝てなくなってくると対応を迫られます。その時、これまで相当の投資をして築き上げてきた強みを簡単に捨てられるでしょうか。過去の成功をもたらした自社の強みに執着するあまり、環境適応が困難になります。自社の強みを作るという企業行動はRBVでは正しいはずなのに、それが将来の成功を阻害する弱みになる・・・そんなパラドックスがRBV には存在するのです。

RBVのパラドックスから抜け出すためにも、環境変化を考慮しなきゃあいけませんねという話になったわけです。その中で、変化に対応するための能力であるDCの概念が注目を集め、発展してきたという経緯があります。まさに、昨今注目を集めているDXの話にもつながるのです。