前回までに検証した構造方程式モデリング(SEM)の結果を踏まえ、戦略的連携が中小企業の競争優位にどのような影響を及ぼすかを考察します。
まず、戦略的連携は直接的な競争優位の獲得には有意な影響を与えないものの、組織機敏性やITダイナミック・ケイパビリティ(IT-DC)を通じて間接的に競争優位を高めることが明らかになりました。このことは、単なる連携の有無よりも、その連携を通じて得られる知識や資源の活用能力が重要であることを示唆しています。
具体的には、連携によって得られた外部資源や情報を自社の組織能力に取り込み、変化に迅速に対応する機敏性を高めることが、競争優位の形成に寄与しています。また、IT-DCが組織機敏性を促進する役割も重要であり、ITを戦略的に活用する能力が企業の競争力を支える要因となっています。
しかしながら、組織機敏性が競争優位に対して負の影響を与える傾向が観察されたことから、過剰な機敏性がかえって資源の分散や経営の混乱を招く可能性も指摘されます。この点については、次回掘り下げます。